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情報格差と経済格差について

2020年01月13日
考察 0
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情報管理LOGの@yoshinonです。
情報格差が、経済格差を生んでいるのではないか?という記事を見かけたので、今回はそのことについて誤解を生んでいる点と何が格差を生んでいるのか?について少し書いていきたいと思います。


  
【 情報格差と経済格差について 】  

 1.情報格差(知的格差)と経済格差についての記事

 2.学力(知的)格差とメディア接触時間の相関関係について

 3.学力(知的)格差と経済格差について

 4.真に学力(知的)格差を招くものは…








先日、情報格差と経済格差についての記事を読みました。こちらですね。

どうしてここ20年で情報格差(知的格差)が広がったのかを永江理論で解説します - More Access! More Fun


私自身は、あまり永江氏という方を存じ上げないので、今回の記事で一方的な決めつけやバッシングにならないようにしたいと思います。記事の内容に関しては、全文を読んでいただくのが良いと思います。記事自体は、それほど長くはないので、すぐ読めるかと。

ただし、私なりに要約すると

・所得格差が広がってきている
 (ただし、富の再配分は欧米よりも上手くいっている)
・情報には、2種類ある
 プッシュ型・・・向こうから来る(動画、テレビ、ラジオなどのメディア)
 プル型・・・・・自分で取りに行く(本、新聞、雑誌など)

・若年層と高齢層はプッシュ型に依存する傾向がある
・プッシュ型の情報伝達速度は非常に遅い

 →テキストの10倍ぐらい
・テキストで情報を得ることは伝達速度が速く、プッシュ型の情報伝達速度と比較しても情報格差が広がっていく
・「情報格差」は「所得格差」を生んでいる



となるでしょうか。
※もしも、なんか解釈違うぞ?というのがあったら教えてください。

さて、ここで最近関連する似たようなニュースがありましたね。

香川県、ゲーム利用時間を規制する条例案がネットで物議
「スマホ平日60分」県条例素案|NHK 香川県のニュース

個人の家庭での自由な時間を制限するという意味不明そのもの、というか憲法違反が疑われる条例案が話題になっていました。
この背景にあるのもスマホやゲームなどのメディア接触時間が、学習時間を奪っていうるであろうから、それを制限すれば学習時間は延びるであろうと非常に短絡的な発想から発案されたことがうかがわれます。





ここでは、あえて前述の永江氏が書いている「知的格差」という言葉は使わない方向で書いていきます。そもそも「知的格差」自体が、定義されておらず、一般的な用語としても適切ではないからです。したがって、すでに様々な研究が進んでいる教育分野の用語として定着している「学力格差」という用語をこの記事では用います。
※「知的格差」という言葉自体にも問題が多いと私は思っています。

私自身は、教育の専門家でも何でも無いですが、一般的に公開されている情報を並べてみると、様々なことを読み取ることができます。
以下は、エビデンスがある事実です。

1.学力は二極化していない
これは、かなり多くのメディアが「学力は二極化している!」と大々的に取り上げていたりしますが、それは本当でしょうか?こういう時は、原典にあたるというのがセオリーなので、全国学力学習調査を分析している国立教育政策研究所のデータを見てみましょう。平成30年のデータが一番新しいものとしてアップされているので、正答数のグラフです。
二極化しているならば、山の形はラクダ型になるし、そうでないならばなだらかな山形を形成するはずです。


小学校の国語A・Bのグラフ。

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算数A・Bのグラフ。

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中学校の国語A・Bのグラフ。

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数学A・Bのグラフ。

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どうやら、様々なところで言われているほど二極化していないように見えますね。それどころか、割と正規分布っぽいラインを描いているように見えます

二極化しているグラフというのは、こういうのですね。


引用:ますます深刻化する二極化・幼児教育ポータルサイト


こちらのサイトでは、二極化を煽っていますが、このグラフそのものの出所は、ここが出典では無いかと思われます。


引用:学力の二極化ますます深刻|学研教育総合研究所

2007年の高等学校教育課程実施状況調査結果のデータのようです。幼児教育とは、全く関係の無いデータだし、これ一つとって、二極化してる!ヤバい!というのは、大丈夫かな?と思ってしまいます。




2.メディア接触時間と学力の関係
これに関しては、国レベルの調査結果が見つけられなかったので、(色んな問題があるにせよ)膨大な学力に関する調査結果を持っているベネッセから引用します。


引用:第62回 メディア利用時間が子どもの成績に与える影響はどれくらいか?│ベネッセ教育総合研究所

これは、2014年版なので、もはやかなり古くなってきているのは、否めません。ただし、傾向としては、メディア接触時間が学力を下げる要因になっていそうだということが分かります。

ちなみに、最近の小中学生のスマホの所持率についての調査結果は、以下の通りです。


引用:第4章 子どものスマホ・ケータイ利用|2018年版|モバイル社会白書Web版|NTTドコモ モバイル社会研究所


そして、使用時間について。


引用:第4章 子どものスマホ・ケータイ利用|2018年版|モバイル社会白書Web版|NTTドコモ モバイル社会研究所

これを見ると、中学校2・3年生では、使用時間が2時間以上が40%を超えていますね。先ほどのベネッセのデータと併せて考えると、もしも相関関係が成り立つ場合は、およそ10%前後の影響がありそうだと分かります。
だからといって、
やっぱり若者のスマホやゲームの時間を制限しなくちゃイカン!

などと短絡的に考えてはいけません。

しかし、もっと影響があるのがコレです。


引用:第62回 メディア利用時間が子どもの成績に与える影響はどれくらいか?│ベネッセ教育総合研究所

インターネットやメールの利用時間の長さは、成績に対して負の影響をもっている。次に学習態度であるが、「わからないところはまず自分で考える」の自力志向は成績に対してプラスの影響があるのに対し、「わからないところはすぐに誰かに教えてもらう」の他力志向はマイナスの影響が確認された。またそれぞれの標準化偏回帰係数の大きさを比べたところ、「わからないところはまず自分で考える」の自力志向は0.289と、インターネットやメールの利用時間の2倍以上の規定力を持っていることが確認された。

第62回 メディア利用時間が子どもの成績に与える影響はどれくらいか?│ベネッセ教育総合研究所


非常に面白みのない結果ですが、これが事実というやつです。
センセーショナルなデータだと、「これが、真実の○○!」みたいな感じで拡散しやすいのですが、面白みのない事実は、なかなか広まらないのですよね。

まずは、自分の頭で考えてみるという態度

が、学力に大きな影響を与えているのです。

さて、スマホやインターネットの負の影響ばかりが取り上げられがちですが、こちらのグラフもどうぞ。


引用:第4章 子どものスマホ・ケータイ利用|2018年版|モバイル社会白書Web版|NTTドコモ モバイル社会研究所

自分で調べたり、家族とのコミュニケーションに利用したり、遠方の人の考えを知れるようになったりと良い側面も見られます。確かに最近の若い人達は、すぐに調べる癖が付いていますよね。でも、それによって「自分の頭でまずは考えてみる」という部分がないがしろにされてしまう面が、あるのかもしれません。





これに関しては、世界中で指摘されており、相当数の研究も進んでいるため、改めて指摘するまでもないレベルですが、一応書いておきます。

経済格差=世帯収入格差によって、子どもの学力にも大きな影響を与えるということに関して、内閣府からもこのように明記されています。


世帯の所得と子供の学力には明確な関連があることが、以下のように数々の調査研究から示されている。

第一に、就学援助受給世帯において学力に課題のある子供が多い傾向がある。平成19年~平成22年全国学力・学習状況調査321 の結果報告では、就学援助を受けている児童生徒の割合が高い学校のほうが平均正答率が低い傾向があることが指摘されている。また、学力テストの結果のみならず、学力に関わる複数の側面「自らが設定する課題や教員から設定される課題を理解して授業に取り組む」「授業において、自らの考えがうまく伝わるよう、資料や文章、話の組み立てなどを工夫して、発言や発表を行う」「熱意をもって勉強している」「授業中の私語が少なく、落ち着いている」のいずれにおいても、就学援助率が低い学校の方が学力が高い傾向が認められている(平成28年度同調査)322 。


引用:第3章 2.2.(2)学力|政策統括官(共生社会政策担当) - 内閣府




引用:第3章 2.2.(2)学力|政策統括官(共生社会政策担当) - 内閣府

ダメ押しでいくつか、分かりやすいデータを挙げていきます。


引用:子どもの貧困と教育格差 | CFC



引用:2017年11月日本財団が発表したデータより





永江氏の主張の一つであるテキストを読むというようなプル型の情報摂取というのは、プッシュ型の情報伝達速度よりも格段に速いことに同意します。そして、先ほどの

”「わからないところはまず自分で考える」の自力志向”

が、学力に強い影響を及ぼすという面と考えあわせると、プッシュ型の情報取得は、「自分で考える」が削がれてしまい、受け手に廻りがちになるという面があるのは否定できなさそうな気がします。むしろ、情報取得速度よりもそちらの方の問題が大きそうな気がします。

しかし、一番の社会的な問題点としては、経済格差による学力格差の方なのです。
分かりやすいスマホやゲームをスケープゴートにしておいて、さらに影響の大きい経済問題から目を背けるというのは、さらに学力格差の拡大再生産を行う最も近道であると分かるはずです。

今回の記事を書こう思ったきっかけのツィート。





 eyeglass2.png 情報管理LOGの眼
 自分の頭で考える

ちきりん氏が、「自分のアタマで考えよう」という本がありましたが、自分の脳みその主体は、やはり自分の脳なんですよね。そういう意味で「まずは自分で考える」という癖を付けさせることが、大事だなと思いました。
上の私の連投ツィートの最後でも書きましたが、知へのアクセスに対するコストは、昔と比べて下がり続けており、スマホやタブレットは、そのためのツールとしても安価で優秀です。しかし、実際に知にアクセスするかしないかは、(リーチをどんなに短くしても)結局は個人によるというところまでにはなってきたということですね。
今回の記事の結論としては、情報の取得速度云々の件に関しては、まあオマケみたいなものぐらいな感じだということで筆を置いておきます。


この件について知りたい場合は、この本もオススメ!





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