情報管理LOG
yoshinon

ITやモバイル機器、iPhone、手帳や本など。

GIGAスクールにおける数々の懸念について

2020年02月24日
考察 0
2020022400.png


情報管理LOGの@yoshinonです。
IT業界の巨大特需になりそうなGIGAスクールですが、私はこの段階ですでにかなり先行きに懸念してます。たぶん、専門家の皆さんだったら、指摘済みかもしれませんが、私なりにこの部分がかなり心配だぞという点について書いてみます。


  
【 GIGAスクールにおける数々の懸念について 】  

 1.GIGAスクールとは何なのか?

 2.GIGAスクールにおける懸念を挙げてみる

 3.現実的な解決方法はあるのか?








まず、GIGAスクールとは何なのか?ということについてですが、徐々にニュースなどで取り上げられてきて、認知度が高まってきてはいますが、それでも「知らないよ?ナニソレ」みたいな反応もまだまだ見られる(観測範囲狭い)ので、まずは概要から説明します。
これが、GIGAスクールの概要です。

 1.1人1台学習者用端末の整備
 2.校内LAN(通信環境)の整備
 3.クラウド・バイ・デフォルト
 4.ICT支援員などの人員整備
 5.デジタル教科書などの整備


すごいよ!!マサルさん」風に説明すると、こんな感じ。なかなか的確だと思うぞ。




これでは、あまりにもザックリしすぎているので、もう少し解説すると日本の子どもたちが、OECDどころか世界的に見てもICT活用力が低いということが明らかになってきたからです。これらのグラフは、なかなか強烈ですよ。
「学校の勉強のために、インターネット上のサイトを見る」という項目。

2020022401.png
引用:OECD 生徒の学習到達度調査(PISA)~ 2018 年調査補足資料~国立教育政策研究所



「関連資料を見つけるために、授業の後にインターネットを閲覧する」という項目。

2020022402.png
引用:OECD 生徒の学習到達度調査(PISA)~ 2018 年調査補足資料~国立教育政策研究所



「コンピュータを使って宿題をする」という項目。

2020022403.png
引用:OECD 生徒の学習到達度調査(PISA)~ 2018 年調査補足資料~国立教育政策研究所



まあ、さもありなんとは思いますけどね。
そもそも、日本における若者のPC所有率は、非常に低いという実態があるからです。


画像引用: データえっせい: 若者の情報機器の所持率(2018年)

どちらかというと、スマホファーストな状況なわけです。
とはいえ、日本の若者だけが突出してスマホ所持率が高いというわけでもないので、単に日本の若者のPC所有率が低いだけというのが見えてきます。



Smartphone Ownership Is Growing Rapidly Around the World, but Not Always Equally


このあたりのことを受けて、急きょトントン拍子で決まってきたのが、このGIGAスクール構想だったのです。政策パッケージ図。


引用:GIGAスクール構想の実現パッケージ- 文部科学省


そして、それによって期待されること。

2020022404.png
引用:「1人1台端末・高速通信環境」がもたらす学びの変容イメージ- 文部科学省

拡大してみると…ふむふむ、なるほど良いことがたくさん書かれていますね。

2020022405.png


引用:「1人1台端末・高速通信環境」がもたらす学びの変容イメージ- 文部科学省

これ、ぜひとも実現していただきたいものです。実現できるならば。
そういうわけで、以下に私が今のGIGAスクールに感じている懸念について書いていきたいと思います。





今回のGIGAスクールに関しては、私はその実効性においてかなり懸念を感じています。以下にそのGIGAスクールについての懸念について挙げていきたいと思います。

1.実行スケジュールがタイトである
まず、今回のGIGAスクールの実行スケジュールがタイト過ぎます。こちらが、ロードマップになります。
※クリックしたら大きく表示されます。

2020022406.png
※引用:GIGAスクール構想の実現 ロードマップ


これを見ると、2020年度中に小学校5~6年生、中学校1年生対象に国費で賄われるとされています。2020年度中にですよ?
この国費というのは、先ほど挙げた4.5万円分の補助金です。
私は、こういう役人系ではないので、このあたりの流れに関しては、調べた限りレベルでしか分からないのですが、今回のGIGAスクールは大まかに以下の様になると考えられます。

 ①地方自治体毎に策定
 ②都道府県レベルで機器調達の集約
 ③国への申請
 ④申請の認可
 ⑤機器の発注or契約


このあたりの詳しいのは、こちらですね。

2020022407.png
※引用:「未来の学び」構築パッケージ(令和元年度補正予算・2年度当初予算案)

2023年度までには、5カ年計画として小学校1年生~中学校3年生までをカバーするという流れになっています。
まあ、これぐらいの集中度を持ってやらないと、達成できるものもできないのだろうという考えなのでしょうが、あまりにも性急すぎな印象は否めません、たぶん、今頃各自治体職員の担当者の皆さんは、必死の形相で対応を検討しているに違いありません。
私の国策イメージでは、通常3年ぐらいのスパンでやる感じなのですが、2020年度中というのは、いささかスケジュール的にタイト過ぎだなと思うわけです。

そこで、ハタと思うのが、オリンピック後の経済の停滞とずっと言われていたのですが、それに向けての無理矢理なカンフル剤としてやろうとしているのではないか?と勘ぐってしまいたくなりますよね。確かに巨大な特需ではあるけど、あまりにも早急にやり過ぎると、大枚をはたいたけど、練られていないために無駄にする可能性が高いような気がします。



2.インターネットの出口問題
次に1人1台に耐えうるインフラがあるのか?という問題です。例えば、私の子どもが通っている学校は、他の学校よりは多少機器的な充実度では高いように見えます(iPadが80台ぐらいあるそうです)。しかし、実際に使っていると、インターネットに1クラスみんなが接続しようとすると、止まってしまって全く見られないという状態になるそうです。だから、3人に1台みたいにして接続させても、それでも遅すぎる状態らしいのです。
40台レベルでこれですからね。

これが、小学校だと1学年3クラス×6クラスが1人1台と考えると、人数にしておよそ720名が接続したときに耐えられるインフラが学校側にあるあるのか?というと甚だ心許ないとしか言い様がありません。というか、パンクするのが見えていますよね。

2020022408.png


GIGAスクール構想では、校内のWi-Fi整備や自治体毎のLTEや5Gの整備なども視野に入れて整備するように示していますが(「GIGAスクール構想の実現 ロードマップ」参照)、果たしてどれほどの実効性があるのか皆目不明です。LTEや5Gで接続となったときに、誰がその接続費用を払うのか?という問題なども出てくると思うのですが、どこにもその記載は発見できませんでした。



3.機器の管理ができるのか?
これは、「5.教員が使いこなせるのか」、「6.機器トラブルへの対処ができるのか」でも触れますが、機器の管理をどうするのか?という実際的な問題が出てきます。

例えば、この動画は教師に対する暴力をスマホで撮影してTwitterにアップしており、それによってこの問題が発覚した事件でした。



他にもこんな動画とか?




今回のGIGAスクール構想では、インカメラがあるタイプの機器を選定するようにとなっています。デジタル教科書とかにQRコードとか入っているので、それを撮影して授業に生かそうみたいな感じだと思うのですが、そういう牧歌的な使い方だけで終わるのか?と思ってしまいます。

動画撮影→その場でアップ

もあり得るでしょうし、

動画撮影→USBメモリなどで持ち出し→アップ

などということも考えられます。
性善説に基づいて制度設計するのは良いのですが、最悪を想定しないと大変な事に直面するのは、現場の先生と被害に遭う子どもなのですよね。

さらに、危機管理の問題点としては、他にも

・機器の盗難、破壊
・勝手にアプリをインストール
・校内ネットワークからの違法行為

 →漫画村やMusicFM的なサイトへのアクセス

など、色々挙げられそうです。




4.そもそも機器の調達ができないのでは?
私は、そもそも機器の調達自体できない可能性が高いと思っています。全国で現在1553万人ほど小中学生がいます。少子化で少なくなってきたとはいえ、それぐらいの人数がいるのです。つまり、1500万台規模の端末をこの数年内に調達しなくてはいけないのです。これは、世界規模の調達力をもってしてもかなり厳しい数字ではないかと思います。さらに、最悪なことにコロナウィルスによる中国の生産力の低下などにより、さらに調達は難航を極めるのではないか?と思っています。

新型コロナで日本を襲うサプライチェーン危機、中国リスクとは?

仕方が無いので、コスパの悪い売れ残りを無理矢理調達するなどということも大いに考えられますね。そうしたときに誰が、その損失を被るかよく考えた方が良いですね。




5.教員が使いこなせるのか
意外に大きいポイントがこれだと思っています。たまに3人に1台みたいな感じで使ってみるか…みたいなノリとは、別次元のことを要求していることに、学校の先生方は気づいていないのではないか?と思っています。
1人1台ということは、常に端末が準備されている状態にあるということです。常時使わなくてはいけないということはないでしょうが、それでも頻繁に使わなければ意味がありません。そのためのノウハウも何も無い中にいきなり突入するのです。小学校への英語教育云々以上のインパクトと衝撃ではないかと思うのですよね。準備期間もそれほどないし。
先ほどの機器の管理もありますが、それを完全にコントロールする能力が果たしてあるのか疑問なんですよね。




6.機器トラブルへの対処ができるのか?
これ、案外見落とされがちだと思うのですが、導入して終わりではなく、それらを継続的に運用することを考えると、機器のトラブルへの対処を考慮しないわけにはいきません。「ネットに接続されない」「充電できない」「アップデートしたら文鎮化した」「落として画面割れた」などなど、え始めたらキリが無いほどトラブルが考えられます。それらへの対処を

誰がやるのか?
費用は、どこが?


が明らかになっていません。
まさか、あれだけブラックで話題になっている学校現場に全てを任せるみたいなことはしないと思いますが、無いといは言えないところが怖いところです。というか、そもそも学校の先生方に機器のトラブルへの対処ができるとは思えないというか、させるべきではないと思っています。
というか、ちゃんと専門の業者が担当すべき案件だと思うのですよね。では、その専門業者は、確保できるのか?と考えてみます。

例えば、20万人都市レベルで考えたときに、小中学生の人数は7000人~1万人ぐらいとします。そうすると、その台数があるということになりますよね。1/100台/1日ぐらいの割合で機器のトラブルが発生するとします(かなり低い見積もりですよ、これは)。すると、1日あたり100台のトラブルへの対処をしなくてはいけません。20万人レベルの都市に1日あたり100台のトラブルに対処できるマンパワーがあるのか?もちろん、業者なので、学校だけが顧客ではないはずです。





とはいえ、もはや走り出してしまっているので、今さら辞めるみたいなことは言い出さないと思います。それが、今の日本の最大の問題点とも言えるのですけどね。

さて、そんな「それ、なんてインパール作戦?」的な状況ではありますが、そんな中にあっても前を進まざるを得ない方々に最大限の敬意を払いつつ、ある程度現実的な解決方法について考えてみました。

1.インターネットの利用は諦めろ
「で、出てきた結論が、それかーい!」と言われそうですが、そうです。実際問題として、1~2年の中でネットの出口対策は、まず間に合わないと考えた方が精神的に楽になります。ISPも各学校からの出口部分も早強が必要なのは、間違いありませんが、それは3~5年レベルの計画が必要でしょう(今の日本なら)。今回のGIGAスクール構想は、「クラウド・バイ・デフォルト」も大きな目玉で挙げられていますが、それはそれにふさわしいネット環境が整ってから言えるのであって、それが無いならば、絵に描いた餅と同じです。ただし、今やインターネットに接続しないで何かをやるというのは、難しいでしょうから以下の様に考えます。

A:非同期的方法で乗り切る
クラウド・バイ・デフォルトにおいて、データの保存などをクラウドストレージにと考えたくなるでしょうが、それに関しては、必ずしも即時同期としなくてもよいわけです。夜間であったり、空いている時間に接続して同期を図るならばなんとかできるかもしれません。

B:接続台数を絞る
前述のように今でさえクラス全員が接続しようとしても止まってしまうような、貧弱なネット環境なので、それを全員にリソースを提供しようなどというのは、諦めるのが吉です。教育委員会レベルで1単位時間の接続数を絞るようにすべきですね。インフラの整備状況によって、徐々に開放していくようにした方がよいでしょう。ゼロよりは、ずっとマシだし、現実的です。


2.アウトプット主体に切り替えよう
1人1台の端末でデジタル教科書を普及させようと考えているみたいですが、それは後回しで良いと考えます。たかだか映像が見える、関連資料が見られるぐらいですよね?先ほど書いたように動画観るにしてもネット接続が前提になります。あっという間にパンクしますよ?
それならば、その端末を有効活用させるためには、インプット主体ではなく、アウトプット主体に切り替えるのです。そのあたりに関しては、以下の記事で書きました。

紙のノートを捨ててデジタルノートに切り替えよう!

ノートをデジタルに変え、さらにアウトプット系のアプリなどを使って交流活発化させるために使うのです。これだったら、イントラネットの整備さえ整えば実現可能です。例えば、こんなアプリを使うのもありですね。

ロイロノート・スクール いますぐ使える授業アプリ
ロイロノート・スクール いますぐ使える授業アプリ
開発元:LoiLo inc
無料
posted withアプリーチ


【ロイロノート・スクール】1人1台GIGAスクールに最適な授業支援クラウド



この方針は、文部科学省と全く相反するものではなく、むしろ完全に合致するものです。



3.教員への研修は必須
使わせるべき主体者である教員への研修は必須でしょうね。ただでさえブラックとか言われていますが、だからといって、この難局を何もせずに乗り切ることは難しいでしょう。ただし、一括に研修というのも時間的に難しいかもしれません。

そこで、段階的に先進校+各校のICT担当者への研修を最優先でやるべきでしょうね。ICT担当者に関しては、専門的な研修を積んでもらい、ある程度簡単な保守レベルまでできるようにすべきかもしれません。そうすることによって、少なくとも低レベルなトラブルまで業者が出てくる必要を減らすことが可能になると考えます。
ただし、そのような業務外業務をやらせるときは、きちんと賃金的な保証が必要でしょう。無料で使える保守点検員みたいに扱えば、いずれ誰もやりたがらなくなり、さらにブラックに磨きがかかってしまうことが見えてきます。




 eyeglass2.png 情報管理LOGの眼
 前に進むしかないならば…

上で「それ、なんてインパール作戦?」なんて書きましたが、まさにそういう状況が目に見えているだけに、これは学校の先生方大変そうだな…と思ってしまいました。とはいえ、文部科学省は、もうやる気満々な感じみたいなので、どんなに絶望的な状況であっても前に進むしかないのですよね。そういう場合は、何を切り捨てて、何を残すべきかを明確にしておかないと、全部をやろうとして、全部を失敗するしかなくなります。上でも書いたように、現実的に何だったら達成可能かを見極めてやって欲しいと思います。業者を潤わせるのが、目的では無いはずだと思いますので。





これからの「教育」の話をしよう 2 教育改革 × ICT力 (NextPublishing)
学校広報ソーシャルメディア活用勉強会
インプレスR&D (2017-03-17)
5つ星のうち5.0



関連記事

コメント0件

コメントはまだありません