「顔認識」「顔認証」「顔識別」の違いについて大まかに解説

情報管理LOGの@yoshinonです。
先日、「顔認識」「顔認証」「顔識別」についての議論が盛り上がっていました。今後、私たちの個人情報の保護の観点から重要なポイントになってくると思われます。このあたりの議論の土台になる部分が曖昧だと、そもそもがかみ合わなかったりするので、簡単に整理してみました。
【 「顔認識」「顔認証」「顔識別」の違いについて大まかに解説 】 1.最近の議論の発端など 2.「顔認識」「顔認証」「顔識別」の違い 3.その他の用語など |
事の発端としては、「硫酸男」として大きくニュースにもなった事件がきっかけでした。
硫酸かけた男、被害男性に「バカにしていただろう」…1か月前に六本木の路上で : 社会 : ニュース
東京都港区の東京メトロ白金高輪駅で男性が薬品をかけられて重傷を負った事件で、静岡市の大学生の男(25)が事件の約1か月前に被害男性と会った際、「バカにしていただろう」と恨みを口にしていたことが捜査関係者への取材でわかっ
これは、「東京メトロ白金高輪駅で男性が薬品をかけられて重傷を負った事件」なのですが、割とスピード逮捕されたのです。
これの逮捕劇の舞台裏を取材した記事がコレでした。
「硫酸男」スピード逮捕のウラで…実はJRが「顔認証カメラ」を導入していた(週刊現代) @moneygendai
JR東日本が、ひっそりと「顔認証監視カメラ」を導入したことをご存じだろうか。駅利用者の顔と、登録されている犯罪容疑者や不審者の顔をリアルタイムで照合し、検知しているというのだ。
しかし、語句の利用について高木浩光氏が、ツッコミのツィートを投げました。
ツッコミどころ多し。
— Hiromitsu Takagi (@HiromitsuTakagi) September 13, 2021
①認証(authentication)じゃなくて識別(identification)だと何度言ったら?
②また「漏洩したら」とか言ってる。
③「顔の画像を無差別に収集されるのはあまり気持ちのいい話ではない」収集?
結局何が問題なのか全くわかっていない。 https://t.co/UeRY2Riq0A
「認証」と「識別」の区別が付いていないのではないか?などなどのツッコミです。
実は、このJR東日本のAIカメラによる監視を始めたというニュースについては、すでに8月段階で高木氏によって懸念が示されていました。
この解説記事、解説だと思って読むと、サラッととんでもない新事実が書かれてる。1面スクープ並みの新事案発生じゃないの? https://t.co/4khOA7rsya pic.twitter.com/TsLmEkT6LN
— Hiromitsu Takagi (@HiromitsuTakagi) August 26, 2021
そして、結果的にはJR東日本は、社会的な合意が得られていないと撤回するに至りました。
駅で出所者の「顔」検知、JR東が取りやめ…「社会の合意不十分」と方針転換 : 社会 : ニュース
JR東日本が顔認識カメラの検知対象に刑務所の出所者と仮出所者を含めている問題で、JR東は21日、出所者と仮出所者の検知を当面の間、取りやめることを決めた。刑期を終えた人らの監視にあたる可能性があることなどから、「社会的
ことの経緯を整理すると…
1.硫酸男表れ被害
2.スピード逮捕
3.解説記事にJR東日本のAIカメラの件が載る
4.高木氏、解説記事の間違いを指摘
5.JR東日本のAIカメラの問題点多数指摘される
6.JR東日本AIカメラ撤回
という流れでした。
私は、3の部分についてツィートしています。
これ、前に高木ひろみつ先生が、指摘していた案件だよね。ヤバいなと本気で思ってます。なぜ、新聞は一面で問題点について扱わない?それとも、問題点が理解できないのか?
— yoshinon@情報管理LOG (@yoshinon) September 13, 2021
「硫酸男」スピード逮捕のウラで…実はJRが「顔認証カメラ」を導入していた
@moneygendai https://t.co/g9QJIk6zYy pic.twitter.com/5hN9Wu6rec
「顔認識」「顔認証」「顔識別」の区別がついていない人は、ここを読むべき。
— yoshinon@情報管理LOG (@yoshinon) September 17, 2021
そうでないと議論以前かと思う。
あまりにも未熟な日本の「顔」画像利用の議論|一般社団法人次世代基盤政策研究所(NFI)|note https://t.co/pCyPhqVDst pic.twitter.com/399Jh3gXLu
後者で取り上げた記事が分かりにくい、理解できないなどのツィートをいただいたので、今回の記事を書くに至りました。
まあ、確かに「顔認識」「顔認証」「顔識別」とか、語句が似ているので分かりづらいよね。
さらに、「顔検出」「顔照合」とか類似語句多すぎ問題もあるので、そのあたりも整理したいと思います。
ここからは、大まかな解説に留めておきます。詳細なのは、専門家の皆さんの文章を読んでもらった方が良いと思われるからです。でも、ザックリと違いを知りたいならば、以下を参考にしていただけると良いかと思います。また、万が一、私の認識が間違っている場合は、ご指摘いただければと思います。@yoshinonにDMください。
1.顔認識
まずは、顔認識からいきます。
顔認識というのは、「そこに顔があるぞ」と判別する自動処理のことです。

これは、デジカメとかで顔にフォーカスする機能とかついていたりしますよね?これは、デジカメが「顔認識」しているからできるのです。さらに、単に「目鼻口があるから顔だ」というだけではなく、その顔の特徴なども自動処理されることもさすこともあります。
2.顔認証
これは、iPhoneとか持っている人だったら即座に理解できるのではないかと思います。FaceIDと呼ばれるもので、顔をかざすとiPhoneの画面ロックが解除されたりするものです。あらかじめ登録されていた顔と認識された顔が同じかを判別する処理のことを指します。

これは、顔の場合ですが、指紋の場合は、「指紋認証」と言いますよね?同じです(TouchIDですね)。
3.顔識別
そして、今回のJR東日本がやらかしたのが、この「顔識別」になります。「顔認識」された顔が、刑務所の出所者と仮出所者の顔のデータベースと照合して識別していたとされます。このように「顔認識」された顔を多数の顔のデータから合致するものを探し出すのが、「顔識別」となります。

整理すると…
「顔認識」されたものを、1対1で照合するのを「顔認証」。1対多で照合するのを「顔識別」というのです。

その他の紛らわしい用語もここで整理しておきましょう。
「検出」「証明」「照合」あたりを押さえておきましょう。
1.顔検出
こちらは、「顔検出」≒「顔認識」と考えても良いのではないかと思います。ただし、処理的には、「顔検出」→「顔認識」になると考えられます。こんな感じですね。

昔のデジタルカメラって葉っぱが偶然人の顔に見えたりしたときも顔だと「検出」していましたよね。
2.顔証明
「顔証明」は、「認認証」によって同一であると見なされた場合、A=A'が成り立つので、同一人物であるとする手続きを指します。これは、普通にアナログでもやっていますよね。運転免許が証明書になりうるのも、こういう理由です。

3.顔照合
「顔照合」は、「顔識別」をする際の処理の過程を指します。多数の顔のデータベースを元にそれが同一のモノであるのかを確認する過程が「照合」で、多数の顔のデータベースから合致した結果が、「識別」であると考えると良いかもです。


紛らわしいよね
まあ、どれも似たような語句なので、紛らわしいのは間違いありません。一般の人にとっては、勘違いしやすいポイントですよね。でも、メディアは、そのあたりちゃんと自覚的に使うと良いと思うのですよね。若干、混同して使用しているところもあったので。
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